ハードコア (2015)
一人称視点で最後まで押し切った実験
by 10days1movie · 公開 2026-09-23
| 区分 | 映画 |
|---|---|
| 監督 | イリヤ・ナイシュラー |
| 出演 | シャルト・コプリー, ヘイリー・ベネット, ダニーラ・コズロフスキー, ティム・ロス, アンドレイ・デメンチェフ, スヴェトラーナ・ウスチノヴァ |
| 公開 | 2015 |
| ジャンル | アクション, アドベンチャー, SF |
| 上映時間 | 97分 |
映画全体が主人公の目だけで進行したらどんな感じだろう。この作品はその単純でありながら無謀な発想ひとつにすべてを賭ける。我々が画面で見るすべての場面はヘンリーという人物の視界そのものであり、彼の手と足だけが時おり画面の下の方に現れるだけで、肝心の彼の顔は最後まで映らない。まるで一本の巨大なアクションゲームを自分でプレイしているかのようなこの映画は、好き嫌いが極端に分かれざるをえない実験作だ。しかしその実験を最後まで押し切った意地だけは認めざるをえない。
どんな映画か — 顔のないサイボーグの妻救出記
物語は主人公ヘンリーがある研究所で目を覚ます場面から始まる。彼は記憶を失ったまま機械の義手と義足をつけたサイボーグとして蘇っており、自分を妻と呼ぶ女性エステルが彼を迎える。しかし平穏はつかの間、超能力を持つ悪党アカンが押し入ってエステルを拉致し、ヘンリーを追い始める。声を出せないヘンリーは妻を救うために果てしなく走り、戦う。その過程でジミーという正体不明の協力者が様々な姿で繰り返し現れてヘンリーを助けるのだが、この人物の秘密が後半の反転をなす。筋立ては単純だが、その単純さが一人称アクションという形式のための足場になる。

演出 — 身体に装着したカメラで撮った一人称
この映画のすべては一人称視点という形式から出発する。監督イリヤ・ナイシュラーは特別に製作したカメラ装備を自ら身体に装着し、走り、飛び降り、格闘する瞬間をすべて主人公の目の高さで収めた。その結果、画面は絶え間なく揺れ、疾走し、観客を一瞬たりとも静かにさせない。追跡と銃撃、墜落と格闘がほとんど休む間もなく続くのだが、この速度感がすなわち映画のアイデンティティだ。
ただしこの強烈な形式には明確な代償が伴う。画面があまりに速く揺れるため酔いを感じる観客が少なくなく、一人称という制約ゆえに主人公に感情的に没入するのが容易でない。物語の深さより体験の強度にすべてを賭けた映画ゆえ、一本の長いアクションシークエンスに耐えるような疲労感も確かに存在する。それでも既存の映画文法ではとうてい出てこない新たな感覚を作り出したという点で、この試みは十分に興味深い。
演技 — 毎回変身するシャルト・コプリーのジミー
主人公ヘンリーは顔も声もない人物ゆえ、事実上演技よりカメラを背負ったスタントチームの身体が主演を担う格好だ。そのためこの映画で演技の重みは脇役たちにかかる。その中心にシャルト・コプリーがいる。彼はジミーという協力者を演じながら、毎回まったく異なる外見と性格の人物として登場して映画に活力を吹き込む。真面目な軍人からひょうきんな変わり者まで自在に変身する彼の姿は、単調になりかねない展開に変化を与える最大の楽しみだ。
悪党アカンを演じた俳優は超能力を持つ誇張されたヴィランを臆面もなく押し切り、エステルを演じたヘイリー・ベネットは限られた分量の中でも映画の情緒的な軸を担う。人物たちはやや漫画的に描かれるが、その誇張がむしろゲームのような映画のトーンとよく合う。

映画が語るもの — 物語より感覚を前面に立てた宣言
この作品は大層な主題を伝えようとする映画ではない。あえて意味を探すなら、映画という媒体が観客にどこまで直接的な体験を与えられるかを試すことにその目的がある。これまでアクションゲームが見せてきた一人称の没入感をスクリーンへ移し替えられるか、という問いに対する一つの大胆な答えなのだ。物語より感覚、意味より体験を前面に立てたこの選択そのものが映画の宣言だ。
評価とレビュー
この映画のIMDbスコアは6.7点、ロッテントマトの鮮度は51パーセント、メタクリティックのスコアは100点満点に51点だ。スコアに表れているように評価はちょうど半分に分かれた。形式の斬新さとエネルギーを高く買う側と、酔いを誘う画面と貧弱な物語を指摘する側が真っ向から対立した。明らかなのはこの映画が好き嫌いの真ん中に立っているという事実であり、まさにその点がこの作品を忘れがたい実験作にしている。

総評
出来栄えが完璧な映画とは言いがたい。物語は薄く、形式が与える疲労感もなかなかのものだ。しかし映画が与えうる体験の限界を広げてみせようというその無謀な挑戦、そしてそれを97分の間ずっと揺るぎなく押し切った一貫性だけは拍手に値する。新たな感覚を体験したい観客に、これほど確実な刺激を与える映画も珍しい。その気概と完走に★4.0を与える。
こんな方におすすめ
- 一人称ゲームのような強烈な体験型映画を楽しみたい方
- 既存のアクション文法を抜け出した実験的な試みに興味のある方
- 休む間もなく畳みかける速度感に耐えられる方
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